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2025.08.12

ボイセンベリーで広がる、誰もが活躍できる居場所づくり【認定品生産者|NPO法人明日に架ける橋・さぁかすチャレンジド三豊】

できることはあるのに、発揮できる場所がない。障害のある人たちが直面するそんな課題にともに向き合い、誰もが活躍できる社会を目指して、選択肢を増やすことが求められています。障害があっても、できること・得意なことに取り組み活躍できる場をつくりたい。そんな想いを持ち、2016年、三豊市山本町辻小学校跡地に障害者就労支援施設「さぁかすチャレンジド三豊」が誕生しました。校庭には、地域から受け継いだボイセンベリーが実をつけています。

廃校を、また通いたくなる場所にする

旧辻小学校。校舎のつくりはほとんど当時のまま
かつて児童たちが給食を食べた大部屋は、現在利用者の食堂として活用されている
2016年、地域に惜しまれつつ閉校した三豊市山本町の辻小学校。福祉事業を展開するNPO法人明日に架ける橋は、小学校校舎をそのまま引き継ぎ、ここに就労継続支援B型事業所「さぁかすチャレンジド三豊」を開所しました。

「かつて、障害のある人は社会から隠されていました。しかし、どんな人もうつむいて暮らす必要なんてありません。もっと相手の存在を認めてあげられる社会をつくる、堂々として居られる場所を確保するのが、私たちの役割です」(理事長・朝江宏さん)
理事長・朝江 宏さんがお話を聞かせてくれた
開設当初は、施設の掃除や福祉生協の配達などの作業から始まりました。利用者には、施設で取り組んだ作業に対して工賃(賃金)が支払われます。ただ、この障害を持つ人が得られる工賃の低さが、全国的に課題となっています。

「障害者の工賃は、作業所によっては時給換算すると70円とか、1つ物を組み立てて1円50銭とか。そんなことはさせたくないと思いました。障害者といっても、いろいろな特性があります。利用者が一人でできることを、わざわざ職員が代わってやる必要はありません。できることは自分でやってもらうし、もっと働きたいという人には働いてもらいたい。そうして頑張った分は、工賃として還元したいんです」(朝江さん)

現在、約20名の利用者が通うこの場所。彼らが胸を張って作業に取り組み、通いたい居場所になるにはどうしたらよいか。その答えのひとつが、付加価値の高い商品を自分たちでつくることでした。

ボイセンベリーをこだわりの栽培方法ごと受け継ぐ

利用者が活躍できる作業の選択肢を増やしたい。そう考えていたとき、朝江さんの元へ一本の連絡が入ります。“ボイセンベリーの栽培を引き継いでほしい”という、地域の農家さんからでした。

「一度圃場へ見学に行ったことのある農家さんからの連絡でした。高齢になってきたということもあり『あんたに任せたい』と。農薬を使わないなど、非常にこだわりを持って栽培されていたため、その栽培方法ごと引き継ぐことにしました」(朝江さん)

ボイセンベリーとは、ブラックベリーとラズベリーを掛け合わせたキイチゴの仲間。アントシアニンや葉酸・食物繊維・ミネラル類などが豊富に含まれ、近年では抗酸化作用や美肌効果などが期待される果実として、注目を集めています。さっそく朝江さんたちは、学校の敷地内に畑を耕し、ボイセンベリーを植え、水をやりました。
枝のトゲに気をつけながら、一つひとつ手摘みする利用者の方々
赤色を通り越し、黒っぽく色付けば収穫どき
献身的な手入れの末、現在では毎年6月頃にたくさんの実を収穫できるようになりました。収穫期を迎えた畑へうかがうと、利用者の方々が一つひとつ丁寧に手摘みしていました。車椅子に乗っている方でも、もの静かな方でも、果実を優しくつまみそっと引くと収穫できます。利用者同士で「それはまだ色が薄いよ」「トゲに気をつけて」と会話しながら、どんどんと収穫が進みました。

地域との縁が繋がって栽培された国産・農薬不使用のボイセンベリーは、付加価値の高い商品開発につながり、利用者の工賃もだんだん上昇しているといいます。
利用者の一人が収穫したボイセンベリー。みずみずしさが感じられる

農薬不使用・果実100%のボイセンベリー製品

農薬不使用で栽培され、利用者が丁寧に一つずつ手摘みで収穫した果実たち。収穫後は、着色料や保存料などを使用せず、果実をまるまる使ったジャムや冷凍果実、パウダーなどに加工されています。

商品のひとつである「ボイセンベリー果汁」を実際にいただいてみました。
果汁100%の贅沢なボイセンベリージュースは、爽やかな酸味が広がったあとに熟したボイセンベリーの甘味が残る、夏にぴったりのフレッシュジュースです。乳酸菌飲料で割ると、ボイセンベリーの香りをしっかりと残しつつ、よりまろやかな甘味になります。
右がボイセンベリー果汁ストレート、左は乳酸菌飲料とボイセンベリー果汁を1:1で混ぜたもの
三豊市内のお店では、ボイセンベリーを使ってフルーツ酢やアイスクリームが作られるなど、活用の幅もどんどんと広がっています。

「ボイセンベリーの栽培を始めたのも、ちょっとした地域とのつながりがきっかけでした。今でもたまたま出会った人が面白い話をくれたり、いろんな人がここに来てくれたりします。『この施設は残しとけよ』って、神様が言ってくれているのかなと思っています」(朝江さん)

明日に架ける橋のめざす未来

ボイセンベリーの茂る前で、利用者と職員の方々
NPO法人明日に架ける橋が山本町辻小学校跡に「さぁかすチャレンジド三豊」を開所してから、来年2026年で10周年を迎えます。今後の展望についてうかがいました。

「これからも利用者が『やってみたい』と思える作業を増やしていきたいですし、彼らが作ったものを通して、地域のみなさんにこの場所のことをもっと知ってもらいたいと思っています。地域にとって思い出の詰まった小学校なので、もっと地域の方と接する機会を増やしていきたいと考えています。毎年芸術祭を開くなどイベントも開催しているので、ぜひ気軽に来てください」(朝江さん)

ボイセンベリーをはじめとするさまざまな加工品開発にも取り組み、利用者の“できること”の幅が少しずつ広がっています。社会的・環境的価値の高い取組を実践している生産者が生んだ地域産品をチョイスすることは、地域の個性を愛し、農畜水産の未来をつくる一助となります。応援していただける方は、ぜひNPO法人明日に架ける橋(さぁかすチャレンジド三豊)の商品をチェックしてみてください。

三豊市は、「ボイセンベリージャム」「ボイセンベリー冷凍果実」「ボイセンベリー果汁」「ボイセンベリーパウダー」を三豊市の地域産品「みとよのみ®」に認定し、農畜水産の未来をつくる社会的・環境的価値のある取組を応援しています。

【商品情報】

ボイセンベリージャム
自然の甘酸っぱさをぎゅっと凝縮。三豊産ボイセンベリージャム
農薬や化学肥料を一切使わずに育てた、香川県三豊市産のボイセンベリーを贅沢に使用した、素材を生かした爽やかなジャムです。果実本来の甘酸っぱさと香りを活かし、やさしい甘さに仕上げました。

認定品ページを見る(準備中)

ボイセンベリー冷凍果実
摘みたての美味しさそのままに。シャリっとフレッシュな冷凍ボイセンベリー
香川県三豊市の自然豊かな土地で、農薬や化学肥料を使わずに育てられたボイセンベリーを100%使用。デリケートな果実の鮮度と栄養を守るため、収穫後すぐに急速冷凍しました。生のままでは傷みやすいボイセンベリーを、手軽に、そして一年中お楽しみいただけます。

認定品ページを見る(準備中)

ボイセンベリー果汁
フレッシュな酸味と甘み!三豊産ボイセンベリー100%果汁
香川県三豊市で農薬や化学肥料を使わずに大切に育てられたボイセンベリーを100%使用した、贅沢な果汁です。ボイセンベリーは鮮度の維持が難しい果実ですが、新鮮なうちに搾汁し果実本来の風味と栄養をぎゅっと閉じ込め、1年を通してフレッシュなボイセンベリーの風味を楽しめるように仕上げました。保存料・着色料は使用していません。

認定品ページを見る(準備中)

ボイセンベリーパウダー
自然の恵みそのままに。ボイセンベリー100%の贅沢パウダー
三豊産のボイセンベリーの実を、収穫後すぐに瞬間冷凍し、風味と栄養を閉じ込め乾燥させた100%天然のパウダーです。栽培中は農薬や化学肥料を一切使用しておらず、安心・安全にこだわっています。ボイセンベリーは鮮度の維持が難しい果実ですが、本製品は添加物などを加えずそのまま乾燥・粉末化することで、フルーツ本来の味と栄養を手軽に楽しめるように仕上げました。

認定品ページを見る(準備中)

販売場所
NPO法人明日に架ける橋(綾歌郡綾川町)
福祉生協かがわ(綾歌郡綾川町)

※在庫状況は各店舗へ直接お問い合わせください。

生産者情報

生産者

NPO法人 明日に架ける橋(さぁかすチャレンジド三豊)

エリア

山本町

手がけるみのり

ボイセンベリー

解決課題

耕作放棄地解消、循環型農業、担い手確保

所在地

〒761-2103 香川県綾歌郡綾川町陶5779

三豊事業所所在地

障害者就労支援施設「さぁかすチャレンジド三豊」

〒768-0101 香川県三豊市山本町辻1375

連絡先

電話:087-876-6025

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みとよのみ広報
三豊市農林水産課

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